
米国株式にはセクター(区分)が存在しており、米国の経済が経過するにつれて活況して株価が上昇するセクターもどんどん移り変わっていきます。
なので日々変わっていく経済状況を観察し、投資資金を適切なセクターにアロケート(配分)していくことが米国株投資においては重要だと言われています。
そこでこの記事ではセクターアロケーションを参考にしつつ、今後の戦略を考えていきます。
目次
セクターアロケーションとは?

大部分の米国株は上記の図のように10種類のセクターに分けられます。
そしてそれぞれのセクターには資金が集まりやすい時期、注目されやすい時期が存在します。
主には景気が強い時期と弱い時期そして金利が高い時期と低い時期に4分割して、それぞれの状況に適したセクターへの投資を心掛けていくことが投資パフォーマンス向上の肝になります。
上記の図を頭に入れつつ、米国経済の状況を確認してみます。
今の米国経済の状況
現状のアメリカ経済は、人々がワクチン普及により外出して消費を行い市場も活況しています。
実際に企業の景況感を示す景気指標のひとつである製造業PMIとサービス業PMI、ISM非製造業景気指数はともに直近で予想を上回る強い数値を示しています。
日付 | 指標・イベント | 前回 | 予想 | 結果 | |
2021/06/01 | 製造業PMI | 61.5 | 61.5 | 62.1 | 📈 |
2021/06/03 | サービス業PMI | 70.1 | 70.1 | 70.4 | 📈 |
2021/06/03 | ISM非製造業景気指数 | 62.7 | 63.2 | 64.0 | 📈 |
さらにはインフレ指標の一つと言われているCPI(消費者物価指数)も予想を超える強い数値となっています。
日付 | 指標・イベント | 前回 | 予想 | 結果 | |
2021/06/10 | CPI(消費者物価指数) | 4.2% | 4.7% | 5.0% | 📈 |
2021/06/10 | コア・CPI(食品・エネルギー除く) | 3.0% | 3.5% | 3.8% | 📈 |
加えてFRBは今年(2021年度)のGDP成長率を7.05%と見込んでいることから、現在は非常に強い景気状況にあることが伺えます。
また2021/06/16のFOMC後にアメリカの長期金利(10年債利回り)は低下し、現在は1.4%台で推移しています。
これからの米国経済
FRBは2021年度のGDP成長率が7.05%と非常に高い成長率を見込んでいますが、2022年以降はどうなのか。
実際にFOMC経済サマリーで提示されたGDP成長率の予測推移のチャートを確認してみます。


GDP成長率の予測 | |
2021年度 | 7.05% |
2022年度 | 3.30% |
2023年度 | 2.25% |
FRBは2022年度には3.30%のGDP成長率を、2023年には2.25%の成長率を見込んでいます。
2022年の3.30%という成長率自体は決して悪い数字ではないのですが、2021年の7.05%と比べると半分以下に鈍化することになります。
そして翌年には2.25%とさらに鈍化します。
つまり現状の強いアメリカ経済も今がピークの可能性が高く、今後はその成長も鈍化していく公算が高いのです。
またFRBは徐々にテーパリングに対する姿勢を強め始めていることから、市場のインフレ懸念は後退し、長期金利は低下しています。
特に長期金利の低下は、インフレ懸念の後退と同時に今後の経済の急速な拡大よりも緩やかな成長を示唆している可能性があります。
以上のことから今後はアメリカ経済の成長鈍化を織り込んだ投資を心がけていく方が良いと判断します。
景気鈍化時期において避けるべきセクター

今後はアメリカの景気鈍化を念頭に置いて、上半分のセクターへの投資には注意する必要があります。
中でも現状はテーパリングの示唆によりインフレ懸念が後退し、金利の低下が起こっています。
加えてFRBがテーパリングなどによりインフレのコントロールに動いているという事は、今後も急激に高金利環境にはなりにくい状況が継続すると予想されます。
そのような環境下では右上のセクターはなるべく避けるべきだと考えます。
具体的には、
- 工業(重機・建機・建設資材etc)
- 素材
- 景気敏感(シクリカル)
上記3つのセクター(工業、素材、シクリカル株)は今後は避けた方が良いと見ています。ちなみに工業、素材、シクリカル株は景気拡大の初期において株価を大きく上げるセクターとして知られています。
景気鈍化&低金利で狙い目のセクター
景気の成長が鈍化(景気が弱い)し、なおかつインフレ懸念が後退し、低金利な状況下では上記のセクターとは真逆にあるセクター(左下)に資金が集まりやすくなる公算が高いです。
具体的には、
- 通信
- ヘルスケア
- 消費安定
- 公共
上記の4つのセクターが狙い目になります。
中でもmRNAによるワクチンの成功やアルツハイマーの治療薬がFDAに承認されたことにより、バイオ・ヘルスケアセクターには注目が集まっており、今後は人気化することが期待されます。
バイオ・ヘルスケアセクターの注目銘柄
ちなみに、いま自分が注目している原資産は、
- PFE(ファイザー)
- ABBV(アッヴィ)
- BIIB(バイオジェン)
- RPRX(ロイヤリティ・ファーマ)
上記の4つがバイオ・ヘルスケアセクターで注目している原資産になります。
上記のような原資産を組み入れて、バランスを取りながらポートフォリオを構築していきます。
特にテーパリングに関する議論が開始されるであろうジャクソンホール会議がある8月以降は波乱の相場になることも予想されます。
ちなみにアメリカの金融市場はまだ金融相場の中にあり、今後のアメリカ経済も鈍化すれどブル相場が継続中であることから極端に保守的になる必要は無いと判断しています。
まとめ
- 投資資金をその時期に適切なセクターにアロケート(配分)していくことが米国株投資においては重要
- いまアメリカの景気は非常に強い。
- しかし今後はアメリカの景気鈍化を念頭に置く必要がある。
- 景気拡大の初期は既に終了しつつあることから 工業、素材、シクリカル株は避けた方が良い。
- 景気鈍化&低金利な環境では、通信・ヘルスケア・消費安定・公共株が注目される。
- 中でもバイオ・ヘルスケアセクターは人気化する可能性が高い。