
この記事では長期金利の推移や経済指標、チャートなどを基に米国経済と株式の状況を月の前後半で振り返り、今後の展望について記載していきたいと思います。
目次
指標結果の早見表
日付 | 指標・イベント | 前回 | 予想 | 結果 | |
2021/09/01 | 製造業PMI | 61.2 | 61.2 | 61.1 | 📉 |
ISM製造業景気指数 | 59.5 | 58.5 | 59.9 | 📈 | |
2021/09/03 | ISM非製造業景気指数 | 64.1 | 61.6 | 61.7 | 📈 |
サービス業PMI | 55.2 | 55.2 | 55.1 | 📈 | |
2021/09/01 | ADP雇用者数 | 33.0万人 | 63.8万人 | 37.4万人 | 📉 |
2021/09/02 | 貿易収支 | -757.0億ドル | -709.0億ドル | -701.0億ドル | 📈 |
2021/09/03 | 非農業部門雇用者数(NFP) | 94.3万人 | 73.3万人 | 23.5万人 | 📉 |
失業率 | 5.4% | 5.2% | 5.2% | – | |
2021/09/14 | CPI(消費者物価指数) | 5.4% | 5.3% | 5.3% | – |
コア・CPI(食品・エネルギー除く) | 4.3% | 4.2% | 4.0% | 📉 | |
①新規失業保険申請件数(前週比)9/2 | 35.3万人 | 34.5万人 | 34.0万人 | 📉 | |
②新規失業保険申請件数(前週比)9/9 | 34.0万人 | 33.5万人 | 31.0万人 | 📉 |
長期金利(米国10年債利回り)の推移📉

1.34%まで上昇していた長期金利ですが、9月15日に発表されたCPIの結果を受けて1.28%台まで下落しました。

長期的な視点だとまだ歴史的な低水準の中にある状態です。
ここから1981年9月(高値:15.84%)から始まった40年近く長期に渡るダウントレンドを脱して上昇に転じていくのかに注目が集まっています。
雇用統計【NFP(non-farm payroll employment)の結果 📈
2021年9月3日に発表された8月の非農業部門における新規雇用者数(雇用統計)は23.5万人と予想の73.3万人を大きく下回りました。
ちなみに前回は94.3万人でした。
直近のADP雇用者数の数値は弱かったですが、雇用統計の数字も弱い数字となりました。
中身を確認してみると今まで雇用をけん引していたレジャーとホスピタリティーの雇用数がほぼ0となり、ヘルスケアも-4600人となりました。
プライベートサービスの雇用数が大幅に減少。
多くの求人はあるもののデルタ変異種によるパンデミックの影響が顕著に出たかたちとなりました。
失業率(unemployment rate)の結果
9月3日に発表された失業率は予想5.2%に対して、結果は5.2%となり予想に一致する数字となりました。
前回は5.4%でした。(パンデミック前は3.5%)
項目別失業率の表
項目(年齢・人種・性別) | 失業率 %(今回) | 失業率 %(前回) |
10代 | 11.2 | 9.6 |
白人 | 4.5 | 4.6 |
ヒスパニック | 6.4 | 6.6 |
黒人 | 8.8 | 8.2 |
アジア | 4.6 | 5.3 |
成人男性 | 5.1 | 5.4 |
成人女性 | 4.8 | 5.0 |
8月の全体失業率は5.4%と5.2%と改善したものの、前回(7月)と違い黒人層においては悪化しており、10代の失業率にも悪化が見られました。
新規失業保険申請件数の結果
9/2に発表された新規失業保険申請件数は予想が34.5万人に対して実績は34.0万人となりました。
ちなみに前回の申請件数は35.3万人でした。
9/9に発表された新規失業保険申請件数は予想が33.5万人に対して実績は31.0万人となりました。
ちなみに前回の申請件数は34.0万人でした。
CPI(消費者物価指数)の結果📈
9月14日に8月のCPI(Consumer Price Index)が発表されました。
予想 5.3% に対して結果5.3 % となり予想に一致しました。
前回は 5.4% でした。

項目 | 前回 | 今回 |
All item | 5.4% | 5.3% |
Food | 3.4% | 3.7% |
Energy | 23.8% | 25.0% |
All item less food & energy | 4.3% | 4.0% |
( )・・・前回数値
エネルギーセクターは過去12ヶ月間で25.0%(23.8%)の上昇となりました。
内訳の一部としてエネルギー商品は過去12ヶ月間で41.9%(39.2%)、Fuel oilが33.2%(35.3%)、ガソリンが42.7%(39.9%)の上昇となりました。
食品セクターは過去12ヶ月間で3.7%(3.4%)の上昇となりました。
内訳の一部として、過去12ヶ月間でFood away from home(外食関係)が4.7%(4.66%)、Food at home(内食関係) が3.0%(2.66%)、の上昇となりました。
エネルギーセクターと食品セクターはともにまだ微増している状況です。
コア・CPI(食品・エネルギーを除く)の結果
コア・CPI(食品・エネルギーを除く)の数値は、
予想 4.2% に対して結果 4.0% となり予想を下回りました。
前回は 4.3% でした。
分野別のCPIを確認してみると過去12ヶ月間で中古車・中古トラックは31.9%(33.4%)、輸送サービスが4.6%(6.9%)の上昇となり、相変わらずまだ高いものの前回の上昇率と比べると共に下落しました。
ISM製造業景気指数の結果📈
9月1日に発表されたISM製造業景気指数は、予想 58.5 に対して結果 59.9 となりました。
ちなみに前回は59.5でした。
ISM『非』製造業景気指数の結果 📈
9月3日に発表されたISM非製造業景気指数は、予想 61.6 に対して結果 61.7 となりました。
ちなみに前回は 64.1 でした。
製造業PMIの結果の結果 📉
9月1日に発表された製造業PMIは、予想 61.2 に対して結果 61.1 となりました。
ちなみに前回は61.2 でした。
サービス業PMIの結果 📈
9月3日に発表されたサービス業PMIは、予想 59.8 に対して結果 59.9 となり予想をやや上回る数値になりました。
ちなみに前回は 59.8 でした。
主要3指数(SP500、ナスダック100、ダウ平均)の推移

SP500の年間チャートになります。
長らく50日移動平均線に支えられ、底堅く推移していました。
しかし今回下落したことにより50日移動平均線を守れるか注目の状況です。

上記はナスダック100の年間チャートになります。
こちらも順調に上昇してきましたが、下落している状況です。
まだ50日移動平均線までは余裕があります。
しかしSP500が50日移動平均線を守れなかった場合はさらなる下落も想定する必要があります。

上記はダウ平均(DJI)の年間チャートになります。
こちらもSP500同様に下落していますが、既に50日移動平均線を割ってきています。
注意が必要です。
主要3指数とラッセル2000との推移比較

オレンジ:SP500 グリーン:NASDAQ100 イエロー:ダウ平均 パープル(紫):ラッセル2000
今まで順調だった主要3指数でしたが、ラッセル2000とともに下落基調になってきました。
深い調整の始まりの可能性もあるので注意が必要と見ます。
ちなみにラッセル2000は、米国の代表的な小型株指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダックなどに上場している銘柄のうち、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄の時価総額加重平均型の株価指数です。
炭鉱のカナリアと呼ばれており、 景気後退期には先行して下落し、景気回復期には先行して上昇する傾向があります。
今後の展望
CPIは予想に一致しましたが、コアCPIは予想を下回りました。
その内容を受けて長期金利は下落しました。
また雇用統計(NFP)は予想を大きく下回る数字となりました。
特に前回は大きく改善していた黒人の雇用が悪化していたのが印象的です。
現在は長期金利と株価が同時に下落。
長期的には強気目線であることに変わりはありません。
しかし目先では経済の停滞懸念が出てきており、市場はそれを織り込み始めていると感じます。
またアノマリー的にも9月は一年で一番パフォーマンスが悪い月です。
短期的にですがアメリカ株式市場は一旦の天井を打った可能性があります。
なのでトレードも上値を追ったり、安易に値ごろ感から買い増しは避けます。
ここは過度なリスクを取らずに、引き続きキャッシュに余裕を残したバランス重視のポートフォリオを継続していこうと思います。